カテゴリー別アーカイブ: 酒々井パーキングエリア

ハレルヤ

渋滞の中原街道を抜けてハイウェイに入り抜いたり抜かれたりしながらここまで来た。ラジオが株価の下落を伝えていた。近く、経済の動向に左右されないライフスタイルがパッケージになって売り出されるだろう。夢のような生活に市民は一同一喜するだろうが、やがてそれがまやかしであることに気がつき、狂人になる者、首を吊る者、ギターを片手に大声で歌う者、しかし多くは何もなかったかのごとくネクタイをしめて満員電車に乗り込むことだろう。そんなことを考えながらここまで来た。90年代ジャズのトーンで男がsingin’ in a rainを歌っている。まさか本当に雨がふっているとは、当の本人も知るまい。その雨は秋で、朝からふったりやんだりを繰り返している。路肩の風になびくススキを見て、ああ秋なんだなと、きっとあの丘にはコスモスが咲き乱れているに違いない。そんなことを考えながらここまで来た。ダッシュボードの温度計は17℃だった。最近電気系統の調子が悪いから信用できるかはわからない。おや?女がレナードコーエンを歌い出した。そう信用できない。待てよ、時計の方は大丈夫か?大丈夫。間違いない。でもそろそろ行かなきゃな。いつものパーキングエリア、いつものコーヒーショップ、いつものテーブル。ハレルヤ、ハレルヤ、ハレルヤ。

コーヒー

細かく濃い雨。ババロアみたいにまとわりついてくる。濡れた地面に灰色の空写ってる。ほんとうの空はも少し白いグレー。雲の向こうに太陽があるのわかる。目の奥の方でワインの色。コーヒーの香りと混ざってぐるぐるしている。あら、同じ枝に赤いの黄色いのまだ緑の。風ない。暑くも寒くもない。コーヒーをいれてくれた女の子の黒シャツ、雨に湿ってる。きっとインクこぼしたみたいないい匂いがする。積み上げられたスタッキングチェア、おじいちゃんたちの日向ぼっこみたいに、壁に背を向け横に並んで車やら眺めてる。さ、行かなきゃね。いつものパーキングエリア、いつものコーヒーショップ、ショートドリップコーヒー300円。

コーヒー

禁酒3日め。頭の中がギラギラする。アルコールは鎮静薬。酒を飲んで人は正気になる。大きな蟻が地表を嗅いで食べ物を探している。酢酸ナトリウム。アルギン、リゾチーム、炭酸カルシウム。青い長靴を履いた少年が踊るみたいにくるくると回転し、ものすごいいきおいでどこかに走って消える。ワンコードのけだるい音楽が後頭部を鈍く刺激している。太ももの付け根のところでカットされたワンピースをひらひらさせて女が犬の散歩をしている。後ろ向きだけど彼女が化粧をしてないことがわかる。ソフトクリームを持った女の子。何て嬉しそうなんだ。それにしても今日の選曲は素晴らしい。頭の中にスピーカー付きのラジオ局が入ってるみたいだ。自動ドアが開いてけたましい蝉の鳴き声が湿気た灰色い空気と共に入ってくる。スクリーミング J ホーキンズ。いつものパーキングエリア。いつものコーヒーショップ。いつもの席。マグカップに残ったぬるいコーヒー。

少年ロシア

いつものコーヒーショップ。店内にもテラスにも客の姿がない。ラウンジ系の爽やかなビートに乗せた男性ボーカル、女性コーラス。温度計はすでに30度を示している。一時停止の設定を解除したかのように、突然何人もの客が店になだれ込んでくる。金髪頭の少年が自動ドアを開け閉めして遊んでいる。母親がロシア語で叱る。父親が飲み物を買ってきて3人でテーブルを囲んで和やかな朝食タイムが始まる。母親のたどたどしい日本語。父親のたどたどしいロシア語。少年の完璧な日本語とロシア語。ブラジルの音楽。ケニアのコーヒー。BGMがレゲエ調になったら少年が席を立って踊り出した。バタバタ、スー、バタバタ、スー、と、奇妙なリズムで野鳥が地面から2メートルぐらいのところを飛んで通り過ぎていく。空の色が薄い。床石を割って顔を出した雑草に強い陽射しが降り注いている。思えばゆっくり座ってコーヒー飲むのも久しぶりな気がする。無職になったのに毎日何でこんなに忙しいんだろう?ふと、店内、また、僕ひとり。日焼けの痛いのが少し痒いのにかわってきた。いつものパーキングエリア。ドリップコーヒー340円。風もないのに木の影アスファルトの上で揺れている。

コーヒー

混んでるなあ。いつものパーキングエリア。近くに新しくアウトレットモールができたからか。春だからか。出かける時、少し肌寒かったから薄いセーター着てるんだけど、こんなに暑くなるなんてね。全身ピンク色のど派手な衣装に身をつつんだ50ぐらいの女を労働者風の男たちが囲んでいる。老人がひとりでコーヒーを飲みながら熱心に少年ジャンプを読みふけっている。男が向かいの椅子に断りもなく同席してきやがった。工具箱から充電式の電気ドリルを取り出した。おい、何しやがる。自分の太ももに突き刺した。笑ってる。血の匂いがあたりに飛び散っている。やれやれ、つきあってられないぜ。全く。地震よ!とピンク女が叫ぶ。男たちが一斉に笑う。手を叩き涙を流しながら笑ってるのもいる。空では太陽が北風に勝利した。顔をあげたら全部消えた。いつもの席には女。会社員風。ノートパソコンの画面を真剣な眼差しで凝視している。どれ、何を観てんだい。お、YouTubeか。画面には中年男の姿が映し出されている。ベレー帽に無精髭。むむ?オレじゃないか。おい、オレ、そんなところで何やってんだ。工具箱から電気ドリル取り出して、ああ、まさか。自分の太ももに突き刺しやがった。女の顔面に血が飛び散っている。思うにオレにはESTが必要だ。あるいは月にトリップするかだな。

コーヒー

きのうは冬の嵐。今日は春を通りこして初夏。枝にしがみついて雨風をやり過ごした桜の花びらが誇らしげに風に腰かけている。トレバーホーン。格子のあちらにガードレール。その向こうにハイウェイ。またウエディングドレス、ドレスの女。花婿には顔がない。あるのだけどぼんやりしてて存在感がない。ヘアスタイルだけが脳裏に残る。シャンパーニュ。教会の鐘の音を倍速で再生。やけに子連れが多いな。ここで子供の姿を見ることは稀だ。子供のいない国に未来はない。うむ。春休みか。囚人の衣装みたいなボーダー柄の影。おや、丘の向こうに女。白いレースの布を見にまといお腹のあたりに裸の赤ん坊を抱いてアルカイックに微笑んでいる。北欧の音楽隊が彼女たちに喜びの歌を捧げている。5月の風に衣が優しく揺れている。誰かが遠くでユーカリ油を焚いている。

さあ、荷物をまとめよう。旅の季節がやって来た。旅だ。旅だ。旅だ。

コーヒー

猛烈な睡魔。宙に浮いた労働者がデッキブラシで地平線をせっせとこすっている。違う、スコップで生のコンクリをどこかに流し込んでいるんだ。コーヒーショップのマグカップが新しくなった。不思議だな、セキレイがいる時はスズメの姿を見かけない。駐車場の中心に据えられた監視カメラがいきおい良くぐるぐると回っている。あれじゃ映像解析担当する人は大変だ。イスラムの街みたいに女の姿がない。男たちだけがお茶を飲み、タバコを吸い、世間話に花を咲かせ、あるいは黙り込んでポケットに手を突っ込んでいる。野菜のトルティーヤ包み。膨張剤、乳化剤、塩化カルシウム、カロチノイド、システイン、リゾチーム、、読んでるうちに目が覚めてきた。おはようございます。女の子の声。生足に冷たい風が当たってピンク色の斑点ができている。オレンジ色のパタゴニアを着こなしたお婆ちゃんが振り回したゴルフクラブがサラリーマンの頭に命中した。作業員が引きずり上げて、空中に寝かせ、先ほどの労働者がコンクリをかけていく。今日はお気に入りの靴を履いている。ああ、やっと嗅覚が戻ってきた。明るい黄緑。くるくるむいたオレンジの皮。パイナップルミント。襟のところに少し残ったシャネル。いつものパーキングエリア、いつものコーヒーショップ。ドリップコーヒー340円。

コーヒー

ブラジルからイビサへ。太陽に向かってドライブしてきた。鈍い光。黄色く生ぬるい風。時おりヒュウと荒れた音をたてる。腓腹筋に緊張感。マクドナルドの紙袋が地を這っている。スズメのかくれんぼ。バーバリーのロングスカートをはいた黒髪の女。iPhoneの画面に細かい埃がこびりついている。指でなぞるが、数分でまた白く曇る。まいったね。死神。黒いポンチョをかぶり大きなカマを持っている。ねえ君、2013年だよ。景色を透明なゼリーでコーティングして横長に切り取った立方体がこちらに押し寄せてくる。ブレーキを踏むとそれは止まる。混雑気味のパーキングエリア。いつものコーヒーショップ。右ポケットに660円。ウエディングドレスを着た天使が小走りでこちらに向かってくる。通りすぎて往く。

コーヒー

鉛色の空。と書き出すつもりでいたが、気がつけばまあまあの晴れ空。枯葉たちがじゃれあっている。くるくる回ったり、追いかけっこしたり、転がったり。踊ってるのもいる。やあ、モミジのやつが仲間にはずれてひとりになった。別のモミジが来てタッチした。透明のビニール袋も加わった。お前あっち行けって言われて喫煙所の方にすっ飛んでった。薄い生地でひざ丈のワンピース着た水商売風の女。毛皮のジャンパーを羽織ってる。後ろにヤクザの親分風。女がコーヒーをテイクアウト、親分は金だけ払う。ヤクザはスターバックスでコーヒーを飲まないんだ。宇宙船みたいに巨大な外車に乗ってハイウェイに戻っていく。右の太腿とふくらはぎに打撲痛。東京4℃。横浜4℃。千葉も4℃。バンクーバーは?えーと、バンクーバーは9℃。僕37℃。尿酸値8。身長170センチ。毛皮よりモッズコートの女の子の方が好み。ま、脱いだらいっしょなんだけど。いつものパーキングエリア、いつものコーヒーショップ、いつもの席。ドリップコーヒー340円。

コーヒー

ボブディラン。筋肉痛をツイードのセットアップが包んでいる。睡魔が目の奥の方で澱んでいる。。いつもの席には中年の男が背中を丸め、無心でスマートフォンに文字を打ち込んでいる。例の蝶ネクタイがまた別のスタッフの首元に移動している。コーヒーを受け取る時に彼女の冷たい指が僕に触れる。中年男が何かを思い出しかのように突然立ち上がりいそいそと店を出て行く。僕は男の去ったテーブルに着く。男性スタッフがテーブルを拭いてくれる。ダスターの水分がしばらくテーブルに残り、気化していなくなる。ふてぶてしい態度の太った白人が携帯電話で部下、あるいは取引先に大声で指示をあたえながら店内をおりの中の動物みたいに行ったり来たりしている。テーブルの上で何かの影が揺れている。コーヒーの水面に無数の細かい水の粒がたたずみ、湯気となって立ち上がる順番を待っている。視界の隅の方で女性スタッフが窓ガラスを拭いている。飛行機雲が二本の螺旋に分かれながら静かに南の方向に移動している。頑固なブーツがようやく僕の右足に馴染みつつある。いつものいつものパーキングエリア。いつものコーヒーショップ。10時12分。5時12分、バンクーバー。

コーヒー

雲ひとつない、と思ったらあった。遠くの方に小さいのぽかんと浮かんでる。久しぶりに座れたいつもの席。ガラス越しに太陽のシャワー。テーブルの上、マグカップの黒い影の長さ約20センチ。ところどころに残った雪。雪が溶けた後の乾いた地面。埃を舐める柔らかな風。コンドルは飛んでゆく。窓ガラスに雑巾の跡。前回男子スタッフが付けてた蝶ネクタイ、今朝は女子スタッフの首元にある。付き合ってるのかな。黒いタートルネックがおそろいだ。そういうの素敵。世界中のガールフレンドがある日僕のとおそろいの赤いソックスはいて街を歩くんだ。彼氏にも内緒なの。赤いソックスの日。なんてね。遠くに木蓮?いや違うね。木に積もった雪がそのまま凍ったんだ。あ、雲の数がふえている。いつものパーキングエリア。いつものコーヒーショップ。コロンビアコーヒー340円。

コーヒー

スイング。

薄い日差し。ダウンジャケットの上にダッフルコートを着込んでテラス席に座っている。黒いトレンチを羽織った骸骨が、くわえ煙草の煙くゆらせながらゆらゆらと歩いている。イラン人の家族。交代で記念写真撮影。父、母、兄、弟、男の子がふたり。母親の姿が見当たらない。アスファルトの地面を突つくスズメたち。コーヒーショップのスタッフがブランケットを持って来る。ハイネックのセーターに蝶ネクタイ。斬新なスタイルだ。

メール。

「マックさんはリリーちゃんという、かわいこちゃんと付き合っていて、でも、リリーちゃんは変わった女の子で、動物のように、裸で川を泳いだり、空を飛んだりできる、という。そしたら、いつのまにか、リリーちゃんが、私になってました。」

夢の話か。リリーちゃん?朝っぱらからぶっ飛んでるぜ。

ツアーバスが到着。大量の老人たち、アジフライ目がけ我れ先にと食堂になだれ込んで往く。裸木。3人の女たちが空間を囲み、立ったまま紙コップに入ったコーヒーを嗜んでいる。麦踏みのシルエット。壁の中、湿度高く、少し汗ばむぐらい暖かい。温度差に彼女、頬、火照っている。笑顔。白い歯。黒い瞳。タイトなパンツの裾、くるぶしの上。カットソーのゆるく開いた首もとから鎖骨。木漏れる髪。西の風に僕、壁の外に引きずり出される。いつものパーキングエリア、いつものコーヒーショップ。少しぬるくなったコーヒー。

画像

コーヒー

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赤い猿

今シーズンはじめてセーターを出した。これに合う帽子がない。まあいいや。時間がない。ニットキャップかぶって外に出たは良いが、気がつけばセーターも帽子もマフラーも赤。全裸で通りに飛び出したみたいに恥ずかしい。渋滞避けようと裏道選択したらこれがハズレ。目黒通り右折できないんだ。混雑の駒沢通り経由大回りして首都高速。半月ぶりに酒々井に来た。すっかり葉の落ちた木々。飛行機が上の方、空色の中を、セキレイが頭の少し上を飛んでいる。買ったばかりの靴が足の甲に痛い。10度。半年ぶんのワードローブの匂い。いつもの席にガラス越しの直射日光。暑くてテラスに移動する。赤い中年猿のストリーキング。みんな見てくれ。ついでに脱糞してみようかな。首元に冷たい風。ああこの世の中から全てのクリスマスソングがなくなれば良いのに。うむ。このような僕のウィッシュは常に却下される。神様って奴はユーモアのセンスがない。不機嫌な水曜の朝。あ、胸元を大きく開けた女の子。いいねえ。少しご機嫌な水曜の朝。いつものコーヒーショップ。トールドリップコーヒー340円。

クリスマスソング

太陽に向かってドライブしてきて、太陽に向かって座っている。今年初めてツイードのセットアップを着た。クリスマスブレンド、340円。サングラスを通して見る朝日はオレンジ色。そびえ立つ2本の塔の1本から不気味な白い煙が噴き出している。空には雲ひとつない。クリスマスソングのメドレー。くそったれ。1年でいちばん苦手なシーズンがやって来た。どいつもこいつも浮かれやがって自分だけ乗り遅れてる気がする。サングラスにニットキャップの大男が僕に体を向けて煙草を吸っている。こっちを睨んでるように見える。僕も睨み返す。手のひらからミカンの匂いがする。すっかり紅葉。ギターのゲンをシャッフルするピックの音。コーヒーショップの女の子の黒いカットソー、丈が短くてしゃがみ込んだら肌が見えた。お嬢さん、天気最高だよ、働くのなんかやめて、僕とカーセックスしませんか?蜘蛛の巣が北風に乗って揺らいでいる。いつものパーキングエリア、いつものコーヒーショップ。いつもの席には先約あり、ひとりテラスに座っている。

クリスマスブレンド

暑くも寒くもない。何着ていいかわからないので、結局501にフードつきのパーカー。ソックスだけは冬用の分厚いのを履いた。目黒通りの渋滞は中ぐらい。赤いコートを着たパリスヒルトンには会えなかった。首都高速に乗るまでに、ポットいっぱいのミルクティを飲み、ヨーグルト、バナナ、おにぎり2個、卵焼きを食べなくてはいけないので、なかなか忙しい。ハイウェイは順調。あっと言う間に酒々井に着いた。昨日の夢の銀行の営業マン。あまりにしつこいので、あごのあたりを平手ではたいたら、逆にはたき返してきた。ここで殴り合いになった場合のリスクを短い時間で計算して、僕は奴に殴りかかるのをやめたんだ。夢の中でも僕は理性的な人間に成長している。イラクの友人にメール返信。赤、黄色、黄緑。楓?青年が真剣な眼差しで一眼レフのシャッターを切っている。パンツスーツ姿のOL。むっちりした体のライン。大田区役所からメール。仲六郷にフラッシャー現る。黒髪、太め、緑色のズボン、上半身はだか。女子高生が通りかかるとズボンを下ろす。クリスマスブレンド340円。僕はちょっと太めの女の子が好きなんだ。何思い上がってんの?女の子たちはあなたのために痩せようとしてるわけじゃないわ。いつものパーキングエリア、いつものコーヒーショップ。A7。ジャーン。

コーヒーブレイク

またビリーホリデー、同じ曲だ。店内の音楽は選曲編集されているというわけか。紅葉した楓の木をくぐった木漏れ日がテーブルの上で揺れている。耳障りな声の女。駐車場のワゴン車のダッシュボートの上で、ネズミくらいのサイズの犬がこっちを見てる。飼い主だろう。快晴。今朝は気温がぐっと下がった。沼地のカブトガニみたいに動き回る落ち葉。ナイトアンドデイ。今週履き続けている501が僕のいびつな足の形に慣れてきた。ご機嫌。自動ドアが開き、冷たい風がなだれこんでくる。ここの陽はいつも高い位置から降り注ぐ。しまったな。外に席をとればよかった。コーヒー残り2センチ。おかわりするか?そうしよう。たぶん今朝が100%。いつものパーキングエリア。いつものコーヒーショップ。いつもの席を立つところ。コーヒーのおかわり100円。

日曜のパーキングエリア

こないだスピード違反で白バイに捕まったばかりなので、運転は慎重。一度も追越し車線に入らずに酒々井まで来た。ランニングや自転車では、ゆっくり走るといいことがあったりするが、ハイウェイを80km以下で走るのはストレスだけだ。道が空いてたのが救い。日曜のパーキングエリアは平日と様相が違う。子どもたちの姿。若者。週末シフトで働いてるコーヒーショップの女の子。空はどんよりと曇っている。ピンク色のフェイスタオルが地面に落っこちている。他は全部モノトーンに見える。ミルクをスチームする音もいつもと違う。どこか神経質で耳障りだ。黄色いソックス、お気に入りの革靴。カーディガンを羽織ってガムを噛みながら女の子が走って来る。距離が近くなるにつれて年老いてゆき、目の前で初老婆になった。いつものパーキングエリア、いつもの席、いつものコーヒーショップ。18℃。おや、霧雨だ。やだな。靴を濡らしたくない。

太った女ブルース

車のラジオからジョンレノン。休憩にパーキング入ったらいきなりビリーホリデーか。でフランクシナトラへと続く。雲が低い位置に立ち込めている。風を表す言葉が逃げた。思い出した。生ぬるいだ。風が生ぬるい空気をかき回している。太った女が煙草を吸いながら、こっちを凝視している。僕を見てるんじゃない。僕の食ってる物を見てるんだ。雨が降ってたんだろう。コンクリートに水が浸透している。マイルスデイビス。今日のMr.ディスクジョッキーはやけにベタだな。ほらさっきの女がコーヒーショップに入って行った。テラスの客は僕ひとり。摂氏21。外でコーヒー飲むには完璧な温度なんだけどな。昨夜寝る前に書いた二日酔い男がまだ僕の中に少し残っている。いつものパーキングエリア、いつものコーヒーショップ、ドリップコーヒーブロンド340円。ホットサラダラップ290円。遠くの雲の切れ間に青空が見える。ブタクサのアレルギーで何も匂いやしない。いや、たった今、強烈な女の匂いが僕を横切った。顔を上げたら例のデブだった。ドスドスドス。何だろな。後ろ姿がやけにセクシーだ。ジャンポールゴルチエか何か着せてやりたい。

休憩

彼女はこの夏恋をした。ロールケーキの断面みたいな雲がふわふわと南西の空を漂流している。冷却スチームの下に小太りのサラリーマン、老婆たちが集まって涼んでいる。いつもより薄いアイスコーヒー。340円。172日ぶりの筋肉痛。イージーリスニング。一体誰がそのような意味不明な言葉を考えついたんだ?桃色に色づき始めた楓の葉。風に転がる落ち葉。ベンチの下にたまった埃。日焼けした肌。カッターナイフの刃を立てたら、つるんと一皮剝けてしまいそうなくらい弾力があって瑞々しい。ソフトバンクの株価、昨日比マイナス⒈08%。ウッドベースが語りかける。踊ろうぜ、お嬢さん。踊ろうぜ。いつものパーキングエリア、いつものコーヒーショップ。女たちの笑顔が妙に心騒がせる。秋。

いつものコーヒーショップ

午前8時40分。いつものパーキングエリア。快晴。少し哀しげな青空。能天気なスチールドラムの音。胸に番号が入ったポロシャツを着た中年男。何処かに番号違いのシャツを着た分身がいて、彼と同じようにコーヒーカップを片手にサンドイッチをほおばり、考え事をしているとは知るまい。拒食症の女。青白い肌の上に更に白い化粧液を塗ったくっている。ハーレーダビッドソン。男子大学生の集団。体格からして皆スポーツが好きそうだ。今の大学生は喫煙がトレンド。女子高生の集団が彼らを横切る。ふたつの集団を取り囲む空気が2頭の巨大な竜となってうねうねと絡み合い、別の方向へと分かれて消える。今朝の夢。人間を凝縮したトランプ半分くらいの銅板を喉の奧に押し込んでいる。4人呑み込んだところで目が覚めた。ブラジル。朝食べたバナナが少し腐っていた。9時を過ぎた。

酒々井

妄想スポット、酒々井を電車で通過中。特に言葉は浮かばない。

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コーヒーショップ

いつものパーキングエリア、いつものコーヒーショップ。ボブディラン。前回来た時は土曜日で賑わっていたが、今日は金曜。静けさを取り戻している。窓の外は30度を超えているが、先週までの猛暑で体が慣れたのだろう、暑いという感覚はあまりない。むしろ夏の終わりが近づくことを考えると少し悲しい。半ズボンはいた小学生が僕を横切ってほっとした気持ちになる。大丈夫、まだ夏は終わっていない。コンクリの割れ目から顔を出した雑草が枯れている。しおからとんぼ。陽炎の向こうから女の子が登場するなら、白いワンピースに麦わら帽と、白いTシャツに501と、どっちがいいか考える。そういえば最近どっちも見かけないような気がする。僕の頭の中の世界は80年代で止まっているのかな。そこには携帯電話はない。スターバックスだってないと思う。パナマ帽かぶってベンチで煙草吸う青年。あ、さっき追い抜いたマセラティ。