また走り出した

ウイルス騒動の外出自粛期間にぶくぶく太り、久しぶりにダイエットを始めた。食べ物をコントロールするだけではなかなか痩せず、運動もした方がよかろうと、少し近所を走ってみた。ナイキのランニング用アプリの履歴を見ると、最後の記録が2017年だったから、実に3年ぶりのランニングということになる。

僕がいちばん最初に走ったのは小学生の頃で、喘息にランニングが良いらしいという情報を仕入れてきた両親に言われるがままに、毎日学校に行く前に近所をジョギングをするのが日課だった。毎朝同じ2kmぐらいのルートを自転車に乗った父親のサポート付きで走るのだが、それを恥ずかしいこととも思わず普通に受け入れていた。子供の頃の僕は親には一切反抗せず何でも言うことを聞く「良い子」だった。

走ることそのものも嫌いではなかったのだろう、苦しかったり嫌だったりした記憶はない。走っているうちに気分が高揚してきて、道で出会う人に「おはようございます!」なんて声をかけたりして、引っ込み思案で暗い少年だった僕とは思えないような行動。走ると脳内モルヒネが出るというような話を聞いたことがあるが、子供の脳はそれにダイレクトに反応するのかも知れない。

中学生になってもっと内に篭るようになり、両親や家族とも口を聞かないような状態(今から思えばあれが僕の反抗期だったのだろう。)になって、その父親のサポート付きランニングはそのままフェードアウトしてしまった。

中学2年生の時にクラス対抗の陸上大会があった。僕は運動は何をやってもからっきしダメで、特に短距離走は苦手。運動会の徒競走は9年間ビリだった。クラスの生徒がそれぞれ参加する種目を与えられていく中で、最後に残ったのが僕と長距離走だった。誰も長距離を走りたがらなかったし、「運動神経ゼロ」の僕には種目を選ぶ権利がなかった。

3000メートル走は400メートルのトラックを7周半する。僕が7周半走ってゴールしようとしたら、ちょうどゴールの前に担任の先生がいて「ホンダ(僕の本名だ。)はもう1周だ。」と言う。僕の前には3人の選手がいて、そのままゴールしていたら学年で4位ということになる。「運動神経ゼロのホンダ」がそんなに走れるわけがない。と担任は思ったのだろう。

こともあろうに僕の考えも担任と同じだった。自分がそんなに早いはずはないと思い、素直にもう1周走って(走る気力を完全に失って歩いている生徒を抜きながら)ビリに近い順位でゴールした。

僕が次に走り出したのは29歳の時だった。30を迎える記念として、自分がこれまで経験のない新しいものごとに挑戦してやろうと思い、トライアスロンの大会に出場したのだ。幸い、僕は小学校の時にスイミングスクールに通っていた(水泳が喘息に良いと両親が聞いてきたのだ。)ことがあるから、水泳はできる。知り合いを通じて中古で自転車を買い、駒沢公園のランニングコースを毎日のように走って練習した。

出場したレースは短い距離の初心者向けだったが、生涯で運動をした経験が全くない僕にとっては未知の世界だった。ビリでもゴールできれば良かったし、最悪ゴールまで辿りつかずとも出場するだけで意味があると思っていた。しかし結果は自分が想像していたよりも良く、僕の順位は出場選手の中で半分よりもずっと上だった。

8周半走ったな。僕は中学の時の陸上大会の3000メートル走で、ひとりだけ8周半走ったと思う。

トライアスロンは僕のライフスタイルを根本から変えてしまった。それは全く新しい生き方だった。その後、僕はフットサル、キックボクシング 、今ではサーフィンと、アクティブに体を動かすことがライフワークの中で重要なポジションにあり、常に「カラダ」が「アタマ」よりも上位にある生き方をしているが、そのスタートは29歳にトライアスロンに挑戦した地点だったと思う。

毎年開催されるトライアスロンのレースに狂ったようにエントリーして「運動神経ゼロのホンダ」のことが嘘であったかのような良い成績も残したが、あるタイミングでバーンアウトがやってきた。

バーンアウトの明確な理由はよくわからないが、ひとつは「記録」が原因なのではないかと想像する。レースに出て自己タイムを縮めることばかりに集中するあまりに、走ったり泳いだりの本来の楽しさを忘れてしまうんだ。

現在はランニングアプリがあって、レースに出なくても自分のランニングデータを記録することができる。希望すれば人と情報を共有して戦うこともできる。むろんそれはそれで走るためのモチベーションにはなるが、どうだろう?僕はまた走り出したが、今のところ距離や時間は計測していない。何も持たずに家を出てルートも決めずに走りたいだけ走る。疲れて走るのが嫌になったら歩けば良い。

何をやるのもまずは格好から。というわけで新しくキャップを購入した。ボサボサに伸び放題の髪の毛をまとめる用途のつもりだったが、たまたま最初に被って走った日が雨で、非常に使い勝手が良いことを知った。ゴアテックス素材だから水は弾くし、頭の中が蒸れずに快適だ。かなり大降りの雨の中のランだったのだけど、顔への滴はほぼ完璧にシャットされて快適だった。防寒効果もありそうだし、これから冬に向けて重宝しそう。オンリーブラックの清いデザインもグッド。別にノースフェイスからお金をもらってるわけじゃないからね。

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