
Lula 11. マガジンハウス刊行
90年代の初頭からサブカルチャー誌のSTUDIO VOICEを毎月購入していた。2009に廃刊(休刊?)されるまで欠かさず買い続けていたから、かなりの量のコレクションが今でも書斎に並んでいる。同誌の何が私のどこを刺激したのかよくわからないが、もともとあまりモノにこだわりがなく、収集癖もない私にとっては珍しい行動だった。
私が経営していた自由が丘のバーに当初、イギリス人で元モデルの女性がよく足を運んでくれていた。何度か会話を交わしているうちに、彼女がSTUDIO VOICEの創刊号(同誌はタブロイド判のカルチャー新聞としてスタートした。76年とウィキにある。)の表紙を飾ったことを知って驚いた。
それからしばらくして今度は何と同誌の編集長がバーを訪れる。たまたま通りがかりで店を見つけたらしい。店を気に入ってもらえたらしく、ちょくちょくやってきては静かに時を過ごしていかれる。STUDIO VOICEと流行通信の新刊を持参してくれるので、関係者だろうとは思っていたが、まさか編集長その人とは。
私の人生では(おそらく誰の人生においてもそうだけど)そのような、不思議体験としてネタにするほどドラマティックではないにしろ、偶然として流してしまうには少しもったいないような出会いやハプニングが度々起きる。
STUDIO VOICEが廃刊になって消えた頃、HUGEという男性ファッション誌が登場してきて、タイプは全く異なるが、特集の斬新さとアートワーク、特に写真が良いのが気に入って、やはり5年後ぐらいに廃刊になるまで買い続けた。
HUGEにおいて、STUDIO VOICEの時のような出会いはなかったが、専属のモデルに知り合いがいた。彼は元々写真を撮っていて、恥ずかしながら私も何度か被写体になったことがある。その時から、撮る側にいるのがもったいないと思わせる独特のムードを持っている男だったから、彼を誌面で見るのには全然違和感はなかった。
以上が、私の雑誌購入体験のほぼ全てである。以降、本屋やカフェで手に取った雑誌をペラペラめくることはあっても、定期購入に到るほど魅力的な雑誌に出会うことはなかった。
なかった。が、それは私が男だからかも知れない。昨年、KOTAの活動を再開してから、女性服との関係を持つ機会が増え、自然な流れから、ふと目にした女性誌を開いて飛び上がった。