イラレの話をする。わざわざ説明するまでもないが、イラストレーターはアドビシステム社が販売する画像編集のソフトウェアである。イベントのフライヤーからブランドのロゴ、ビル屋上のポスターなどなど、我々が日常、目にするほとんどのデザインワークはこのイラストレーターを利用して製作されていると言ってよいと思う。僕も長年使っていて、ホームページやSNSにアップするためのアートワークでは大変重宝している。
イラストレーターの素晴らしいところは、プロユースのツールでありながらにして、専門的な知識がない素人でもそこそこ扱えてしまう利便性で、事実、コンピューター音痴、デザインずぶの素人の僕でも、まあ何となくそれっぽく見えるものが作れている。操作に困った時はグーグルにキーワードを入れれば、ありとあらゆる情報があちらこちらから発信されていて、これまで一度も説明書(そんなものがあるのかどうかも知らないが)の世話になったことはない。
20年ぐらい前だったか、友人からCDにコピーしたソフトをもらって、しばらくそれを使っていた。厳密には違法だが、コピーガードなどもなかった時代で、皆、普通に使いまわしていたと思う。ヴァーションがアップして使い勝手が悪くなり、ある時期にソフトを自分で新しく買いなおしたのが5、6年ぐらい前だったろうか。その時はもうCDではなくて、アドビのサイトからダウンロードしたような記憶がある。2万円ぐらいだったかな。現在に至るまで何の不具合もなく使えていたが、最近、PCの方が先にダメになった。
新しく買ったMacBookはクリーンインストール(前のPCから移行しない。)でスタートしたので、これを期にイラレの方も新調しようとウェブサイトを訪れてみて驚いた。
販売はオンラインで、月額プラン、年額プランのどちらかを選ぶとある。すなわち、これまでのようにソフトを買ってその後は使い放題というわけではなく、いわば契約して使用権利をレンタルするというシステムだ。契約期間中は永遠に使用料がかかる。料金がすごい。イラストレーター単体で月々2500円程度、フォトショップなど他のアプリケーションと抱き合わせのフルプランだと6000円近くする。これまで2万円(あるいは無料)で使い放題だったものが、同じ金額だと3ヶ月で終了という信じられないような値上げである。仮に僕があと10年生きて、その間ずっとイラストレーターを使い続けたら60万円。これまで20年で2万円だったものがだぞ。
ユーザーに選択の余地はない。現在イラストレーターを使わずにデザインワークを行うことはほぼ不可能。仮に同様のソフトが安価が開発されたとしても(無理だと思うけど)、互換性という問題がある。作った作品を印刷屋に出しても、あちらが同じソフトに対応していなければ元も子もない。
アドビはこの機会をずっと待っていたと思う。ほとんど無料でタネを撒き散らして、世界中の人間がそれなしでは生きられないという状況を作り、今ようやく収穫の時期に入ったというわけだ。シャブを売るのと同じセオリー。ビジネスの基本的モデルと言えよう。
同じことはこれからあちこちで起こると思う。LINE、Google、Facebook、、タダと思って使っていて、気がつくとそれなしでは生活できなくなっている。タダより高いものはない。昔の人はよく言ったものである。
あなたが読んでいるこのブログも、タダだと思っていたらある日突然1本60万円とかになるかも知れない。1日に何度も、記事の更新をチェックしに来ているようなら、すでに中毒の可能性がある。ご用心を。