映画「ハナレイベイ」を観ました。村上春樹さんの短編映画化。
10代の頃に初めて村上春樹さんの「風の歌を聴け」を読んで、それはそれは深くハマって、最初の三部作と「世界の終わり〜」の4冊は常に持ち歩いて時間があったら読み返すぐらいよく読みました。英国でパンクロックバンドやりながら、ひとりになったら村上春樹読んでるわけだ。変な奴だよね。
僕は読書家というわけでは全くなくて、特に小説は年に1冊読むか読まないかぐらい。買うには買うんですけどね。だいたい30ページぐらいで集中力が途切れて放り出してしまいます。でも村上春樹さんの小説だけは他と何かがちがって、ぐいぐい言葉が入ってくるんですよね。彼は何かそういう「バカの操作法」みたいな特殊なテクニックを持ってらっしゃるのだと思います。
しかしまあ、世の中には数え切れないぐらいのたくさんの素晴らしい物語が本になっているというのに、一生のうちにその中のたかだか50冊ぐらいしか読まないで死んでいくというのはいささか悲しいことであるような気もします。
そういう村上春樹さんの本も近頃は手に取ることが少なくなってしまいました。最近発売されるものはチェックすらしていない。作家としての能力に磨きがかかって、当時のものとは比べものにならないぐらい力作で読めば楽しいはずなんですけどね。何だか興味が湧いてこないの。
ローリングストーンズがどれだけ長く活動しても「サティスファクション」を超えるような曲を発表できないことからも言えるように、最初にインパクトの強すぎる作品を世に送り出したアーティストはその後ずっと自分の作品の亡霊みたいのにつきまとわれながら活動していくことになります。ちょっとかわいそうな気もします。まあそういうこと気にしない人がずっと長く活動し続けられるのだとは思いますけど。
さて、映画の方はいろいろよかったですけど、まあやはり主演の女優さんの演技力とそれを引き出した監督が素晴らしい。ということに尽きると思います。あと脇役ではサーファーの少年役のひとりがすごくよかった。セリフ棒読みみたいな喋り方。もしかしたら演技ではなくてナチュラルなのかも知れないけど、最近の若者ってほんとにああいう風に喋るんだよね。感情が備わってないみたいな態度でちょっとかっこいいよなあ、とおじさんは思っているのだけど、真似したくても真似できないんだわ。
映画っていいなあ。