菜食主義者/ハン・ガン
読んだ本のことを人に話すのは、何か恥ずかしいことであるような気がして、ふだんはあまり話題に出しませんが、今回ばかりは黙っているわけにはいきません。
韓国の文学に触れたのはこれが人生初。この新しい体験に興奮して一気に最後まで読破してしまいました。異国の話なんだけど、そこまで遠くない。むしろどこか懐かしさすら感じるこの居心地のよさ、この距離感は何だろう?
最初のページからどーんと作者の世界に持っていかれます。途中、いまいちリズムが合わない感じがする場所が何度かあるのは翻訳作品の宿命でしょうか。あるいは訳者と(僕との)相性の良し悪しも関係するかも知れません。あとストーリー的に致命的と思われるミスがひとつ。それ以外はとても気持ちよく言葉が体に入ってきます。
テーマはおそらく「リ・ボーン(生まれ変わり)」だと思います。キーワードである「菜食主義」、とつぜん肉を食べることを「やめる」という行動は、飲酒をやめた自分自身の状況にも重なります。もともと僕が肉を食べないという事実も含め、他人事とは思えない素材があちらこちらにちらばっていて、どこか運命的なものを感じました。
なわけで、全体として重ぐるしい内容ではあるのですけど、わりと楽観的に解釈しました。
そろそろ次のステージに向かう時が来たようです。