演劇「すべての四月のために」を東京芸術劇場で観ました。お芝居とかってあまり馴染みのない世界なんだけど、風邪でダウンの友人からチケットがまわってきたという経緯。このようなイレギュラーなお誘いはできるだけ受けておいた方がよい。というのが僕の持論、「シートに選ばれた。」と考えることにしています。
劇の内容も登場人物も何の前情報もなしに着席。ジャニーズのアイドルが主役とあってかお客の9割は女性。中年男性の姿はほとんどなくアウエー感に押しつぶされてしまいそう。
いざ幕が上がってみれば自分が劇場にいることは忘れ、いつしか深くストーリーの中に吸い込まれてゆきます。この感覚は何なんだろうな。セットとか明らかに作り物のはずなのに妙にリアルに感じます。海のにおいがする。
戦時中の朝鮮半島が舞台、重苦しい題材をテーマにしていながらにして、コメディ作品ばり、随所にちりばめられたコミカルな演出が特徴的な、まさに「笑いあり涙あり」の大作です。登場人物が持つキャラクターとそれぞれのストーリーが舞台上で交錯する内容で、視点の置き方によっては複数の主人公がいるように感じました。
ストーリーや演出も素晴らしいけれど、まあとにかく「役者ってすげえなあ。」って思いました。自分ではない他人を演ずるって。劇場みたいにお客と同じ空間の中で演技するのって、たぶん細胞レベルとかでそのキャラクターになりきることができないと、観客にはそれが伝わってすぐに場がシラケてしまうよね。いやあ想像しただけで震えちゃうね。
観劇後に出演者のひとり中村靖日さん(写真中央)とお話をする貴重な機会を得ました。(とても熱い方でした。)名脇役というとご本人には失礼かも知れないけれど、この作品では彼の存在がとても重要な役割を担っていました。ちょっと代わりが想像できない。彼にしか演じられない役が他にもいろいろありそうです。もうけっこういい歳だと聞いたけど、これから先の活動がすごく楽しみです。応援しよ。
作品のキーワードとメッセージはわりとわかりやすく語られていると思います。音楽もダンスも格闘技も、自分の体を使って表現するアートはみんなそうだけど、やはりスクリーンやテレビで観るのとライブでは大違い。たくさんの刺激をいただきました。風邪をひいた友人に感謝しなきゃ。