ソール・ライター展に行ってきました。
僕は音楽を含めアート作品についてかなり好みが偏っていて、だいたいどの作品(作家)でも「好き」と「嫌い」にはっきりわけることができます。ところが、こと写真になると頭の中がフニャフニャしちゃって、うまく判断することができないことが多いんだな。長く、写真を「アート作品」として認識してこなかったから、価値判断基準が備わってないのだと思います。
そんな「写真音痴」の僕においても、ソール・ライターの写真の中には明確に「好きだ」と言える作品がたくさんあります。特にカラー写真初期の頃がいいよね。有名なアンブレラの赤はもちろんのこと、エレクトロな緑とか、淡いピンクとか、モノクロームな世界の中に呼び込まれた「色彩」の美しさに惚れ惚れしてしまいます。
知らなかったですけど、ソール・ライターは絵描きでもあって、会場にはそれらの絵画も展示されていました。撮った写真に筆を重ねたコラージュのような作品もあって、フィールドの広さを物語っていましたが、正直に言って絵の方にはあまり心を動かされませんでした。同じ作者が創作したものとはとても思えない。ソール・ライター本人も写真と絵は異なるものだと思っていたようで、キャプションのビデオ中で「写真は発見、絵は創作」というような言葉を発しているのを確認しました。なるほどね。僕が写真を「アート」として認知していなかった件にも何となく筋が通ってるわけだ。もちろん「発見」そのものがアートである。という考え方もできますが。
最近はiPhoneにカメラもついていて、写真はずいぶん身近なものになりました。インスタグラムをやっていることもあって、日常生活の中でもモノや人や街の風景などの見方が変わったように思います。常に「一コマ」を探している感じ。ここでもソール・ライターの言う、「写真は発見」がしっかり成立しています。ただ、僕には写真のセンスが全くないようで、せっかく素晴らしい瞬間を発見したと思っても、いざ撮影してみると本当にヘドが出るぐらい酷い絵にしか撮れておらず、いつも自分にうんざりさせられています。つまりまあ、写真音痴なわけだ。
話はそれましたけど、ソール・ライター展。平日の午後にもかかわらず、若い人たちでにぎわっていて、エントランスには列もできていました。アートギャラリーが盛況なのはよいことですね。毎日のように荒廃したニュースがあちこちから飛び込んできますが、最後はアートと花が世界を救うと僕は本気で思っています。
あら、また話がそれました。まあとにかくよい展示会でした。写真から受けた印象、湿度みたいなものが1日たった今でも頭のまわりにまとわりついているような気がします。1300円払って足を運ぶ価値はあるんじゃないかな。行く前と後ではきっと街の景色が違った風に見えると思います。