VINYL ARRIVAL

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すごいものを見つけてしまった。

1975年にルーリードが発表した「メタル・マシーン・ミュージック」というアルバムがある。簡単に言ってしまえば全編ノイズの嵐で、まあいちおう買ってはみたけど、正直、シラフで聴くのはちょっとつらい。発売当時も相当な物議を醸したらしく、特に音楽メディアからのバッシングは激しかったようで、翌年(76年)に発表された「コニー・アイランド・ベイビー」はそれらの酷評(つまりは世間様)に対して「ごめんなさい」と謝意を表するための作品だったと聞いた。確かに同作はルーリードの作品集の中で特出してラブリーな内容になっている。ストーリーの真意は定かではないが、個人的にはこれを受け入れたい。

一般的にロックと言えば「ブレずに筋を通す」「何者にも屈しない」などの強固なイメージがあるが、僕はそれらは「ロックじゃない奴ら」が勝手に作り上げたステロであると考えている。

本物のロッカーは駄目なんだ。喧嘩になったら逃げる。怒られたら謝る。言い訳する。かっこいいのがロックじゃない。駄目なのがロックなんだ。かの内田裕也さんは音楽的には全然ロックじゃないと思うが、彼の生き様は確かにロックンロールだと思う。暴力団をちらつかせて捨てられた女に復縁を迫る(しかも世間は未曾有の震災で大騒ぎの最中に)なんて愚行は本物のロッカーにしかできない。最近(ってももう半年も前になるか)右翼を挑発するパフォーマンスを披露した直後に謝罪を表明したサザンオールスターズの桑田氏なんかもそういう意味ではロックなのかも知れない。大嫌いだけど。(あ、別に僕が右翼というわけではありません。)

話がそれた。そんなわけで、「メタル・マシーン・ミュージック」と「コニー・アイランド・ベイビー」は僕の中にセットで(ロックの象徴として)収納されている。(怒るなかれ、あなたにあなたのルーリードがいるように、私には私のルーリードがいるのだ。神は万人に等しく光と影を与えたもう。貧しき者にも、富める者にも。あなたにも私にも。)

で、メタル・マシーン・ミュージックである。世間の評価とは別にこれを「アート作品」として賞賛する輩は少なからず存在すると思う。けれども、これを正規の「音楽」と捉える者はそういなかったのではなかろうか。だってどう聴いてもノイズなんだもの。

世の中には本当にいろんな人がいるもので、これを「音楽」と認識した者がいた。それもただ音楽として聴いただけではなく、それをクラシック編成のバンドで演奏したというのだからぶったまげた。ZEITKRATZERというドイツの前衛音楽集団。その録音がアナログ盤に収められていて、今回、それを偶然手に入れた。恥ずかしながら本家ルーリードのオリジナル盤と間違えて購入したのである。

針を置いてみる。むむ。トランペットやバイオリンなどの正当な楽器を使用した生演奏でありながらにして、これは、しっかり「メタル・マシーン・ミュージック」だ。確かに、確かに聞き覚えがある。しかも原作をかなり忠実に再現している印象を受ける。おそらく楽曲?全ての音を分解して譜面に落としたのだろう。想像しただけで気が遠くなる作業だが、アドリブで雰囲気だけを再現したレベルの作品ではないことは冒頭を聴いただけでもすぐわかる。

待てよ?つまりメタル・マシーン・ミュージックは最初から「ノイズ」ではなくて「音楽」だったってことだ。ルーリード本人は自分でそれに気がついていたのだろうか?

ちょっと調べてみるとZEITKRATZERは2002年にルーリード本人と共演しているらしい。(本作にはルーリード参加のクレジットはない)

メタル・マシーン・ミュージックは20年ぐらい前にNHKのBS番組の音楽を作った(こう見えてもいろんなことをやってるのだ。)時に、今は亡きファッション・デザイナー=クリストファー・ネメスが服を作っている作業をシュートしたシーンのバックに挿入した。その時のディレクターがまたぶっ飛んだ人物で「何をやってもいい。責任は取る」と言われたので、NGを覚悟で入れてみたら、問題なく通ってしまった。NHKで堂々とメタル・マシーン・ミュージックを流したのは後にも先にも僕らしかいないんじゃないかと思う。今にして思えば僕のDJのキャリアはその頃からスタートしていたのかも知れない。

ルーリードは大好きなんだけど、ルーリードのファン(を自称する人たち)には頭の固い奴が多く(僕もそうかも知れない。)、このようにちょっとルーリードを語ると「お前のルー感は全くなってない。フェイクだ。」みたいなことを言われるのが嫌であまり話題には出さないようにしているのだけど、ま、ファンのひとりとして、たまにはちょっとぐらい喋らせてよ。という気持ちで書いた。

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