この夏定番のチュニックはおりビーチサンダルひっかけて電車に乗った。渋谷13番で地上に出た。まずは空腹を満たす必要があった。天丼が頭をよぎったが、それは恐ろしく食べてはいけないアイテムのうちのひとつだった。あいにく2階の寿司屋は準備中だった。寿司がダメなら天ぷらだ。とわけのわからないルールに納得して階下のてんやに入店してビールを注文した。(寿司だって食べてはいけないうちのひとつだけど)ごくごく飲んだ。ふうっ。おい、となりのサラリーマン、嫉妬してくれ。いんげんを半分にたたんで口に入れて咀嚼もせずに飲み込んだ。キスも海老もしっかりしっぽまで食べた。カウンターに備えられている漬け物を使うまでもなく、米と油、バランスよく完食した。
ライブ好きな女の子を誘おうとメールを試みたが、彼女がロバに「最近マックさんにつきまとわれて困ってるの。」と相談している絵が頭に浮かんでやめた。ロバがヒヒンと鳴いた。
チケット売り場にはミワちゃんがいた。ミルクチョコレートのアイスクリームを注文した。神よ、教えたまえ。ラブリーな女の子と世間話をかわしながらチョコレートアイスを食べる以上の喜びがあるならば。
とにかくリュックサックが欲しかった。たすきがけの時代がとっくに終わっていることに気がついたのは最近のことだ。マンハッタンボーテージ。店の男の子が哀れな目を与えてくれて、ああこの老いぼれの出る幕ではないのだと理解した。向かいのパタゴニアに入店した。パタゴニアは海賊に献金しているブランドなので商品の購入そのものが政治的な活動になるんだよ。知ってる。知ってるよ。知ってるんだけど、僕はやっぱり商品そのものの魅力で勝負したいんだ。グレゴリー。この夏、僕はグレゴリーのダッフルバッグを買った。同じリズムのリュックがあれば問題ないのだけど、リュックになると突然デザインが悪くなる。サイズの小さいダッフルバッグすりゃいいじゃないかって?それじゃ意味がない。
ユナイテッドアローズ。わあ、この秋冬のコムデはいいなあ。で、コムデのリュックがあった。しかも安い。安すぎて手が出ない。ネックレスがセールになっていて買ってくれと主張してたので買った。2万円近くのプライスがついていたけど、僕の首にかかると800円ぐらいに見える。従業員が笑顔で「お似合いですよ。」と言った。
以前はベイクルーズの店舗だったところがトッドシュナイダーになっていた。何で服屋の店員はみなそのような哀れみの目で僕を見るんだ?ごめんよ。ごめん、すみません、すぐ帰るから。良い傘を発見。3万円。よいジャケットを発見。違うんだ、僕が探しているのはリュックサックなんだ。
パルコの地下のトイレで脱糞する。おいおいウォシュレットじゃないのかよ。
12ヶ月、アローズにもビームスにもリュックサックはなかった。クアトロに行ってみる。まだチケットは販売していない。チケットどころか僕はまだリュックサックを見つけられていない。時間がない。セブンイレブンで缶ビール。キャットストリートに戻って最初からやり直しだ。マンハッタンボーテージ。哀れみの接客。「申し訳ございません。どう考えてもお客さまのような老いぼれには似合いません。」そうだよな。正直に言ってくれてありがとう。ありがとう。君と君のチンポコに祝福あれ。ありがとうオブライエン。
パタゴニア。あれ?さっきもここにいたような気がする。おいみんな冷静になって聞いてくれ。パタゴニアのデザインて全体的におっさん臭くない?黒にグレーとか、加齢臭しない?海賊献金以前の問題だぜ。目が覚めた。
渋谷クアトロ。客の8割は僕と同じ中年男性だ。マークリボウ、きっと女性には響かないんだろう。そしてその貴重な2割の女性の中に美人はいない。美人はマークリボウなんて聴かないんだね。やっぱり女の子を誘わなくてよかった。いやいや、男もろくなのいない。負け犬の吹きだまりか。組織とはうまくやっていけなくて自営してるんだけど、たいして儲かってない。そんな雰囲気の輩。奴らは髭を生やして髪をのばす。サラリーマンでないことだけが存在意義。加齢臭と腹の脂肪と抜け落ちる髪の毛と。ああ神さま。今すぐここに爆弾を落として下さい。「加齢臭」。何て酷い響きの言葉なんだ。
電車に乗って自由が丘でおりた。プースカフェで散々かぶいて自己嫌悪。でエンドルフィンに行ってまたかぶいた。勘定は村上さんが全部払ってくれていた。