5月29日の夕方

黒い六人がけのテーブルの上にMacBookを開いて言葉を打ち込んでいる。少し暑い室内の空気と少し冷たい外の空気が網戸を通して行ったりきたりしている。右の窓でカラスが鳴き、左の窓で小鳥がさえずり、室内では時計がカチコチと音を立てている。長女が焼いたチョコレートケーキがひとかけら半透明のタッパーの中に残っているのが透けて見える。テーブルのふちから6センチぐらいのところに小さなフランス製のガラスコップ。中には水が5分の2ぐらい入っている。すぐ横に色とりどりのペーパーにくるまれたキャンディーが入った密封式のガラス瓶。初夏はもうすぐ5時半で日が暮れるまでまだたっぷり時間がある。お湯が沸騰するとピーと音を立てるやかんに僕が映っている。小さな鍋敷きの上に乗っかってるせいで1センチぐらい宙に浮いているように見える。MacBookのモニターの背によそりかかるかのようにしてワニの、たぶんワニと思われる緑色の動物のぬいぐるみがたたずんでいる。マジックハンドのボディーように伸び縮みするタイプのステンレスの鍋敷きが中くらいの大きさでテーブル中央に置かれている。そこに輪ゴムが誰かになすりつけられたようにして付着している。藤でできたティッシュボックスから顔をのぞかせたティッシュペーパーは白ではなくて灰色と影の組み合せでできている。さっきまでミルクティーが入っていたマグカップには笑顔でアロハダンスを踊る褐色の肌の女の子が描かれている。太陽を背に赤やピンクの花に囲まれた彼女はとても幸せそうに見える。あれ?こんどは右から小鳥の声が聞こえる。左では犬が吠え出した。学生たちの足音とさっぱり意味がわからない会話が聞こえる。リビングルームから夕方のテレビのニュースが小さな音量で聞こえてくる。窓の外がゆっくりと、しかし確実に、温度と光を失っていくのを感じる。淡い睡魔が僕の目の前にふわふわと浮かんでいる。さ、そろそろ出かける準備をしなきゃ。

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