今日は大学生の長男を連れて富里の空き地の草刈りに行ってきた。生涯で草なんぞ刈った経験はなく、やり方も何もわからないので、インターネットで調べてみると、初心者のための草刈り講座のページがしっかりあった。いろいろ奥の深い世界ではあるようだったが、ひとまず鎌があればどうにかなりそうだった。専用の作業着なども紹介されていたが、501とスエットパーカーで代用することにした。シューズは履きつぶしたパラディウムが何足もあるので問題ない。実際にこれは非常に機能的で役に立った。問題は蚊やぶよなどの虫対策だったが、とりあえず蚊取り線香で対応することにした。
まずは道具を仕入れなくてはいけない。現地の近くのホームセンターで鎌を物色。ひとくちに鎌と言っても多種多様でどれを選べばよいのかさっぱりわからない。しばし迷ったあげく、「柄が黒でかっこいい」のを1本と「柄が長くて使えそう」なのを1本、それにシザーハンズっぽい草刈り鋏もカートに入れた。その後、アホみたいに広い店内を行ったり来たり、蚊取り線香と軍手を買うのにそれぞれ5分ぐらい、レジに向かうはよいが、カート内を見れば、まさに「生まれて初めて草刈りをやるんです。」って主張で満ちあふれている内容。幸いレジの青年の腕に「見習い中」とあり、こちらがダサイ客であるかどうか判断するどころではない雰囲気だった。ダサイ客になりたくないと思いながら48年を生きてきた。
現場に着いてみたら、気が遠くなりそうなぐらい荒れ放題の土地だった。1日で全面はとても無理と思えたので、となりの敷地との境界線の部分を刈り取ることを今日のノルマにした。取りかかってみたら、思いのほか簡単に草が刈れる。左手で刈り取る草を掴み、右手に持った鎌で刈り取っていく。簡単だ。いろいろなやり方を試しているうちに、長い方の鎌を使うとより効率よく作業が進むことが判明した。長男が長い鎌で大雑把に刈り取り、細かいところを僕が短い方の鎌で刈っていくという流れ作業。
鎌を持つと死神になったみたいで気分が高揚したけれど、それは今回のお話にはあまり関係がない。
初夏の午後は太陽で、デニムの外まで汗がにじみ出てくるぐらい暑かったし、慣れない動きに柔な腰と腕が悲鳴を上げていたが、苦痛に勝る喜びをからだが感じていた。切り取られた雑草や掘り起こされた土の匂いは鼻に心地よく、地面を踏みしめる感触は、ちょっと大げさだけど、地球に住んでいるという事実を思い出させてくれた。
土の中にいろんな種類の虫を発見したが、不思議と蚊はおらず、購入した蚊取り線香は結局最後まで使わずじまいだった。鎌の扱いを誤って、何度か自分を切りそうになってヒヤッとする場面があった。ジーンズの中で何かがもぞもぞ動く感じがした。外から触るとたしかにスネのあたりに異物感がある。もしかして隙間からムカデでも入ったのではないだろうか。そのまま上がってこられては大惨事の可能性もある。いそいでジーパンを脱いでみたら何のことはない、出てきたのはただの草の葉だった。拍子にiPhoneを落としてしまうのだけど、それに気がつくのはもう少し後になってからだ。
3時間あまりでノルマを達成し、次に来た時に作業がしやすいように、小道を作った。敷地の外に飛び出ていた雑草を処理して今日の作業は終了。どろどろの格好のままスーパー銭湯に行って汗を流し、フルーツ牛乳を飲んだ。
あの空き地は畑にしようと思う。畑のことなんか全くなにひとつも知らないが、草刈りができたんだ、畑だってできるにちがいない。ロマンスファーム。いや、ご先祖様から引き継ぐ土地だから「孫兵衛ファーム」にすっぺかな。