痛んだ髪が海風になびいている
頭の中央でボトルネックが弦を擦っている
右手の指かすかに石油の匂い嗅いでとれる
遠くにぼやけるは港町の灯り
あるいは夜の海を往く漁船の灯火
時は獲物を狙うトカゲ
ただ音の組織だけが前へ前へと営む
切れ間に漂う風の音
いや
これは波の音
ほら
またやってきた
ネジとボルトを溶かす音
たぶん少し寒い
寒いから温かい
タウンジャケットの中で育まれた暖気が
首の神経を包み込む
灯台の光がくるくると緑と赤に回転している
風
風
風
目を閉じる
目を開ける
また閉じる
風
ああ
風
風
風
静けさ
前触れもなく割り込んでくるノイズに
何だ
君か
驚かさないでくれたまえ
割れた地面からのぞくオレンジ色の火
脳内をグルグルと旋回する和音
おい
風の向きがかわったぞ
トレモロが効いたアベマリア
全裸のジーザスクライストが岩穴にペニスを入れたり出したりしている
背中に芝生がチクチクしている
ブライアンイーノ
アンエンディング
おやすみ
おやすみ
おやすみ